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蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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「…………ふむ」
「おーっす。どした? 考え込んでるみてぇだけど」
「ああ。俺もお前に習って、報酬を現物で貰ったのだが」
「お、何貰ったんだ?」
「“文殊”という霊具だ」
「ぶっ。ちょ、スゲェもん貰ったな、おい」
「ああ。万能な上に貴重なものだから、正直どうしたものかと迷う」
「そりゃなあ。数があれば、時間移動すら出来る反則霊具だもんなぁ」
「貰っておいてなんだが、俺には過ぎたものだ。どうしたものか」
「んー、適当に使っちまえばいいんじゃねぇ? 使えば無くなるだろ、文殊って」
「仕事の報酬に頂戴したものだからな。無意味に使うのもためらわれるな」
「相変わらず義理堅えな、お前は」
「俺を信用して渡して貰ったものだからな。当然のことだ」
「んー。じゃ、ホントに必要な時まで取っとくんだな」
「やはりそうなるか……」
「そりゃそうだろ。いいじゃねぇか。御守り代わりに持っとけよ」
「……そう、だな。そうしておくか」
「ま、“仕事”や“祭り”をやってれば、わりとすぐに使うことになるだろ」
「かもしれんな。使うようなことは無い方がいいのだが」
「は、そりゃ無理だ。俺達に回されるようなのは、危険度はピカイチだぜ」
「違いないな」
「ま、お互い死なねぇように気をつけようぜ」
「そうだな。生きてさえいれば、どうとでもなるからな」
「だな。っと、俺はこれから“仕事”だわ。そんじゃな」
「ああ。では、またな」
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肩で息をしながら、重くなった身体を引きずって歩く。
精々1km足らずとはいえ、全力を超えて走った反動で足の限界が近い。

「命あっての物種つっても、これはキツいぜ」

だが、座ってゆっくり休憩というわけにもいかない。
あんな猫(?)みたいな猛獣がいる森で無防備に座り込むほど、俺の神経は太くない。
ひとまず、どこか安全な所まで行かねば。
……あるのか、安全な所?
い、いやいや。まさかずっと危険な場所が続くってことはないだろ。
人の住んでいる所まで出れれば、何とかなるはず。

「しっかし、行けども行けども木ばっかりだな」

目に入るのは、木と葉、あと実。
木はやたらと背が高くて、ものによっては見上げても天辺が見えないのもある。
葉はかなり生い茂っていて、非常に青臭い。ところどころ、青い色が混ざってるのは見なかったことにしたい。
実は遥か上の方になっているのもあれば、俺の頭と同じくらいの高さになっているのもある。
喉が渇いてはいるが、さすがに食えるかわからん木の実を口に入れることはしない。
このまま迷って飢え死にしそうになったらわからんが。
それは最後の手段だ。

「とっとと森を抜けられるといいんだが。最後の手段に頼ることが無いように願う――っと」

突然目の前が開けた。
一瞬、森を抜けたのかと思ったが、すぐに違うとわかった。
目の前が開けたのは、そこだけ木が伐採されてるからで、
それはすぐそこに建っている家に使われているらしかった。

木造のそれなりに大きい家を見て、さてどうしたものかと少し迷う。
見た感じ無人ではなく、誰かが住んでいるであろう雰囲気ではある。
それはいい。むしろ、食べ物や水があると確信出来る分だけ素晴らしい。

問題は、だ。
中にいるのが人間ではなく、人外の何かだったらやだなぁ、ってことなんだが。
もし中に猫(?)がいやがったら、今度は逃げ切れる自信は無い。

「……ま、それでもスルーなんて選択肢はねえけどな」

呟きながら、扉へと近付く。
拳で数回ノック。
コンコンと軽い音が響く。
少しの間があり、中で何かが動く気配がある。

さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「おーす」
「ああ。……どうした?」
「なにがだ?」
「いつになく機嫌が良さそうだからな。何かあったのか?」
「やっぱわかるか?」
「ああ」
「実はな……、っと。これだこれだ」
「これは……」
「いいだろ。今回の“仕事”の報酬だ」
「一対の中華刀。……もしや、干将莫耶か」
「おう。投影魔術とやらで創ったバッタもんだけど、そこらの刀剣なんか目じゃねぇぞ」
「そのようだな。こうして持っているだけでも、かなりの力を感じる」
「だろ? 次の“仕事”では、こいつをメインで使うつもりだ」
「お前とは相性が良さそうだからな。良い選択かもしれんな」
「ああ。下手な装備を持っていくより、よっぽど心強いぜ」
「しかし、これほどのモノを投影するとは、かなり優れた魔術師なのだな」
「あぁいや、本人はまだまだ半人前だっつってたぞ。あと、魔術師じゃなくて魔術使いだそうだ」
「む? いまいち定義が判らんが……」
「あー……、確か、魔術を目的ではなく手段として扱う者、だったか」
「ふむ。“こちら”では魔術自体を目的にしているものはそう多くはないのだが」
「“あっち”だと、ほとんどが目的になっているらしいぞ」
「文化の違いだな」
「だな。魔術の隠匿の為に、大量殺戮とかもあるらしいぜ。
 胸糞悪い」
「それは……。そんなところで魔術使いなどと……、大丈夫なのか?」
「いや、どっちかっつうと駄目だ。あいつ、猪突猛進型だから」
「まずいだろう、それは」
「まずいなぁ。ま、いざヤバイ時には助けに行くさ」
「気軽に言うが、そう簡単に“向こう”には行けないだろう?」
「そん時はよろしく頼むぜ」
「本当に気軽に言ってくれる。……だが、いいだろう。友の頼みだ。
 その時は力を貸そう」
「おう、頼りにしてるぜ」
      たかはた なおや
俺の名前は高畑直哉。
地球を侵略する宇宙人と戦う、巨大ロボットのパイロットだ。
すまん、嘘だ。
ホントは、地球の日本に住む高校一年生だ。

「地球」の「日本」。
はい、ここ注目。

なんでわざわざこんな枕詞を付けたかって言うと、もちろん理由がある。
それは、目の前に広がる青々とした森だったり、遠くの空を飛んでいる羽根の生えたトカゲだったり、
後ろから物凄い勢いで迫ってくる猫(?)だったりするわけだ。
一番目はともかく、二、三番目は地球じゃありえねぇだろ?

だが、ここは一体どこなんだ、なんて考える余裕は今の俺には無い。
何故なら、さっきからずっと猫(?)に追いかけられてるからだ。

猫相手に逃げんなよとか思った奴、じゃあ俺と変わってみろ。
俺を追いかけている猫(?)は、2メートルを超えるでかさだ。
その上、時折口から火を吐いてきやがるんだぞ。

「って、熱っ熱っ! ちょっと焦げた!」

人間は獣より速く走れるようには出来てないんだっつーの。
正直、まだ追いつかれていないのは奇跡だ。
火事場の馬鹿力ともいう。
だが、それもそろそろ限界だ。
もう猫(?)はすぐ後ろにまで迫っている。
次に火を吐かれたら、こんがりウェルダンになってしまう。

「じ、冗談じゃねぇっっって、の!」

進行方向にある木の枝を掴み、走る勢いを利用して身体を持ち上げる。

「ギ?」

逆上がりの要領で一回転し――――猫(?)の頭を踏み付けるように着地する。

「ギィ!?」

一声大きく鳴き、動かなくなる猫(?)。
足でつついてみても、ぴくりとも動かない。
どうやら、ひとまず危機は去ったらしい。
もう一度やれと言われても、多分できないだろう。
人間、生命がかかってるとすげぇことができるもんだ。

ともあれ、猫(?)が目を覚ます前にここから放れよう。

「ったく、一体どこなんだよ、ここは」

口をついた疑問に、答えが返ってくることはなかった。
「昨日と同じ今日、今日と同じ明日。人々の知らないところで、世界は変貌していた――」
「ど、どうした? 言ってることがわけわかんねぇうえに、なんかやたらとやつれてるぞ?」
「ああ。“外”での仕事で少し使い過ぎてな」
「お前が使い過ぎるなんて珍しいな! 一体何とやり合ったんだ?」
「レネゲイドウィルスの保菌者だ」
「ああ、オーヴァードか」
「うむ。強かった。それにしぶとかった」
「あいつら、再生するからなぁ」
「最高威力で十発も撃ったからな。さすがに弾切れだ」
「刺殺、絞殺、撲殺、斬殺、圧殺、完殺、全殺、惨殺狂殺、
 どれを使っても一撃で殺しきるのは無理だからなぁ」
「味方もいたから何とかなったが、一人だったら拙かったかもしれん」
「お? いたのか、味方」
「ああ」
「誰だ? 相手が相手だから、やっぱりオーヴァードか?」
「そうだ。“紺碧の刻印”と“ガンズ&ローゼス”。
 この二人と協力した」
「上月兄弟か」
「ああ。“伝説の暗殺者”の名は伊達ではなかった。
 凄まじい腕だった。……色々と、な」
「自称だけどな」
「自称だろうが他称だろうが、相応しい能力があれば問題あるまい」
「そりゃそうだ」
「とはいえ、疲れる人だったのは否定できんが」
「だろーなー。俺も一度だけ組んだことあるけど、出来れば二度と組みたくねぇ」
「弟の方はまともなんだが……」
「兄貴の方がなぁ……」
「助かったのは事実だから、文句は言えんな」
「まあな。次の“外”での仕事が“あそこ”にならないことを祈るぜ」
「俺もしばらくは“あそこ”には行きたくないな」
「大変だからなぁ」
「ああ……」
「ま、とにかく今は休んどけや。俺は今から“外”に出張だ」
「そうか。どこに行くかは知らんが、気をつけろよ」
「おうよ。いざとなったら逃げ帰ってくるぜ」
「ふ。お前らしいな」
「おう。んじゃ、またな。
 土産は期待すんなよ?」
「ああ。それではな」


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