蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 「ん……」 音が聞こえる。 トントンとリズミカルな包丁の音。 くつくつと鍋がたてる音。 新聞をめくる音。 そして、俺を起こす声が―― 「朝だよ。起きて、おにーちゃん」 ――そう、おにーちゃん…………おにーちゃん? おかしな呼びかけに、閉じていた目を開いた。 目に入ったのは夢で見た朝の光景ではなく、見慣れぬ部屋の天井だった。 天井を見ながらぼーっとしていると、視界に赤い影が割り込んできた。 「うお!?」 「おはよう、おにーちゃん」 赤い影はファリィだった。 ファリィの姿を見て、自分が今何処にいるのかを思い出した。 …………ちっ、夢オチじゃなかったか。 少なからず夢であって欲しいという願望があったのか、軽くへこむ。 とはいえ、へこんでいても始まらない。戦わなきゃ、現実と。 さしあたってするべきことは、ファリィに挨拶を返すことだろうか。 「おはよう、ファリィ。悪かったな、わざわざ起こしてもらって」 「うん。おにーちゃん、お寝坊さんなんだね。ぜんぜん起きないんだもん」 う。 「いや、ホントに悪かった。サンキュな」 「サンキュ?」 首を傾げるファリィ。 そういや、こっちには無い言葉だったか。 「礼の言葉だ。ありがとうって意味だよ」 「そうなんだー」 納得したのか大きく頷くファリィ。 動作の一つ一つがいちいち大きいのが、子供らしくて微笑ましい。 「それじゃ、どういたしましてだね。朝ごはんできてるから、はやく起きてきてね」 そう言って部屋を出ていくファリィに手を振って答える。 さて、それでは起きるとしますか。
「ふう」
ため息を一つ吐き、夜空を見上げる。 瞳に映るのは煌めく無数の星。一際強く輝く二つの月が、ここが異世界だということを教えてくれる。 あの後センギの作った夕飯をご馳走になった。 センギは、お客さんにご馳走するのは久しぶりっスよ、なんて言っていたが、目茶苦茶美味かった。 (まあ、自分たちが食べる分は毎日作ってるわけだから、ブランクとかがあるわけじゃ無いんだが) 今はせめてもの礼にと食器を洗い終わり、涼みに外へと出たところだった。 普通に学校に行って授業を受けて帰宅して。 何も特別なことはしてないのに、なんでこんなことになってんだろうな。 俺が世界の理不尽を嘆いていると、背後から声がかけられた。 「あれ、直哉さんこんなとこで何してるっスか?」 振り返ると、両手にコップを持ったセンギがいた。 「ああ、ちょっと涼んでただけだ。そっちはどうした?」 「ファリィをお風呂に入れてきたら、直哉さんの姿が見えなかったっスから。探しにきたっスよ」 そういや何も言わずに出たな。 「悪い悪い。一言言っとけばよかったな」 「いえ、それはいいっスけど。あんまり一人で遠くに行ったらダメっスよ」 危ないっスからね、と警告するセンギ。 また獣やらに追いかけられるのは勘弁だしな。 俺としても、わざわざ危ないところへ近づく気は無い。 「出かけたい時は、オレかファリィに声をかけてくださいっス」 「ああ、わかった」 「あっと、忘れるとこだったっス。これどうぞっス」 そう言って片方のコップを渡してくるセンギ。 コップの中には、薄青色の液体が入っていた。 「クンの実のジュースっス。美味しいっスよ」 「ああ、サンキュ」 「サンキュ……?」 「俺の世界の言葉で、礼の言葉だ。っと、これ美味いな」 ほんのりとした甘味とのど越しの良さが、なんともいえん。 「そうなんスか。勉強になるっスね。クンの実はいろんな物に使えるっスから、重宝するっスよ」 「ふーん」 そうなのか。 「さ、飲み終わったらもう寝た方がいいっスよ。明日は朝早いっスから」 「朝早いって、何でだ?」 「んー、明日のお楽しみっス」 「ふーん?」 ……ま、いいか。 明日になればわかるだろ。 それより、明日ちゃんと起きれるかな。 限界以上の速度で走ったりしたせいで、身体中がぎしぎしいってるんだが。 一度眠ったら、しばらく起きれないぞ、これは。 ただでさえ早起きは得意じゃないし。 「そんなわけだから、俺が起きてこなかったら起こしてくれ」 「どんなわけっスか……」 苦笑しながらも、了解っス、と言ってくれるセンギは良い奴だと思う。 さすがに起こされれば起きるだろ。 ……寝て起きたら、自分の部屋だったりしねえかな。夢オチだったら色々と楽なんだけどなァ。 |
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