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蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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「なぁ、ファリィ」

「なーに、おにーちゃん」

「この辺は危険は少ないんだよな?」

「うん、そーだよ」

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「えーっと、これとこれと。あと、これもか?」

手にした木の枝やら木の実やらキノコやらをファリィに見せて確認してもらう。
リビングの扉を開くと、食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。
テーブルの上に並んでいる朝食が匂いの元のようだ。

「ん……」

音が聞こえる。

トントンとリズミカルな包丁の音。
くつくつと鍋がたてる音。
新聞をめくる音。

そして、俺を起こす声が――

「朝だよ。起きて、おにーちゃん」

――そう、おにーちゃん…………おにーちゃん?

おかしな呼びかけに、閉じていた目を開いた。
目に入ったのは夢で見た朝の光景ではなく、見慣れぬ部屋の天井だった。
天井を見ながらぼーっとしていると、視界に赤い影が割り込んできた。

「うお!?」

「おはよう、おにーちゃん」

赤い影はファリィだった。
ファリィの姿を見て、自分が今何処にいるのかを思い出した。
…………ちっ、夢オチじゃなかったか。
少なからず夢であって欲しいという願望があったのか、軽くへこむ。
とはいえ、へこんでいても始まらない。戦わなきゃ、現実と。
さしあたってするべきことは、ファリィに挨拶を返すことだろうか。

「おはよう、ファリィ。悪かったな、わざわざ起こしてもらって」

「うん。おにーちゃん、お寝坊さんなんだね。ぜんぜん起きないんだもん」

う。

「いや、ホントに悪かった。サンキュな」

「サンキュ?」

首を傾げるファリィ。
そういや、こっちには無い言葉だったか。

「礼の言葉だ。ありがとうって意味だよ」

「そうなんだー」

納得したのか大きく頷くファリィ。
動作の一つ一つがいちいち大きいのが、子供らしくて微笑ましい。

「それじゃ、どういたしましてだね。朝ごはんできてるから、はやく起きてきてね」

そう言って部屋を出ていくファリィに手を振って答える。

さて、それでは起きるとしますか。
「ふう」

ため息を一つ吐き、夜空を見上げる。
瞳に映るのは煌めく無数の星。一際強く輝く二つの月が、ここが異世界だということを教えてくれる。



あの後センギの作った夕飯をご馳走になった。
センギは、お客さんにご馳走するのは久しぶりっスよ、なんて言っていたが、目茶苦茶美味かった。
(まあ、自分たちが食べる分は毎日作ってるわけだから、ブランクとかがあるわけじゃ無いんだが)
今はせめてもの礼にと食器を洗い終わり、涼みに外へと出たところだった。


普通に学校に行って授業を受けて帰宅して。
何も特別なことはしてないのに、なんでこんなことになってんだろうな。
俺が世界の理不尽を嘆いていると、背後から声がかけられた。

「あれ、直哉さんこんなとこで何してるっスか?」

振り返ると、両手にコップを持ったセンギがいた。

「ああ、ちょっと涼んでただけだ。そっちはどうした?」

「ファリィをお風呂に入れてきたら、直哉さんの姿が見えなかったっスから。探しにきたっスよ」

そういや何も言わずに出たな。

「悪い悪い。一言言っとけばよかったな」

「いえ、それはいいっスけど。あんまり一人で遠くに行ったらダメっスよ」

危ないっスからね、と警告するセンギ。
また獣やらに追いかけられるのは勘弁だしな。
俺としても、わざわざ危ないところへ近づく気は無い。

「出かけたい時は、オレかファリィに声をかけてくださいっス」

「ああ、わかった」

「あっと、忘れるとこだったっス。これどうぞっス」

そう言って片方のコップを渡してくるセンギ。
コップの中には、薄青色の液体が入っていた。

「クンの実のジュースっス。美味しいっスよ」

「ああ、サンキュ」

「サンキュ……?」

「俺の世界の言葉で、礼の言葉だ。っと、これ美味いな」

ほんのりとした甘味とのど越しの良さが、なんともいえん。

「そうなんスか。勉強になるっスね。クンの実はいろんな物に使えるっスから、重宝するっスよ」

「ふーん」

そうなのか。

「さ、飲み終わったらもう寝た方がいいっスよ。明日は朝早いっスから」

「朝早いって、何でだ?」

「んー、明日のお楽しみっス」

「ふーん?」

……ま、いいか。
明日になればわかるだろ。
それより、明日ちゃんと起きれるかな。
限界以上の速度で走ったりしたせいで、身体中がぎしぎしいってるんだが。
一度眠ったら、しばらく起きれないぞ、これは。
ただでさえ早起きは得意じゃないし。

「そんなわけだから、俺が起きてこなかったら起こしてくれ」

「どんなわけっスか……」

苦笑しながらも、了解っス、と言ってくれるセンギは良い奴だと思う。
さすがに起こされれば起きるだろ。


……寝て起きたら、自分の部屋だったりしねえかな。夢オチだったら色々と楽なんだけどなァ。


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