蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ……早まったかもしれん。 突然、こことは別の世界から来ました、なんてどう考えても電波な奴じゃねぇか。 本気で余裕無いのな、俺。 ほら、センギの奴も唖然として―― 「ああ、直哉さんは“来訪者”だったんスか。それなら、聞いたことない国なのも納得っス」 ねぇよ! 納得したように頷いてるよ!? 「って、どういうことだ?」 この世界 「えっとっスね。リークリフには、時々余所の世界から迷い込む人がいるっスよ」 「そういう人達のことを“来訪者”って呼んでるんだよ」 センギの説明を継いで、ファリィが言葉を締める。 知っていることを教えるのが楽しいのか、その顔はやたらと楽しそうだ。 しかし、そうか。前例があるのか。 しかも、口振りからして、一度や二度ってわけでもなさそうだ。 「その“来訪者”達の中で、所在がわかってる奴はいるか?」 出来れば話を聞いてみたいんだが。 そんな俺の期待を裏切るように、センギは首を横に振った。 「オレも話で聞いたことがあるだけっスから。詳しいことはちょっとわかんないっスね」 「そうか……」 そうそう上手くはいかないか。 「すまないっスね」 「いや、謝ることはねぇよ。それどころか、感謝してるんだぜ。飲み物まで出してもらってるしな」 いやマジで。 色々と教えてもらったし、本気で助かってる。 この家が無かったら、休憩もままならなかったし。 だから、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいって。 「飲み物ありがとな。美味かった。礼をしようにも、一文無しなのがアレなんだが」 「いや、お礼なんて結構っスよ。それより、直哉さんはこれからどうするっスか?」 「そうだな……」 どうするかな。右も左も分かんねぇからなぁ。 まぁ、とりあえずは、 「ここから歩いて五日かかるっていう街でも目指すかな」 人がたくさんいるとこ行けば、なんとかなるだろっていう浅い考えだが。 他にどうしようもないし。 「街までっスか? 歩くとかなりあるっスよ」 「そこは気合い入れて頑張るしかねぇなぁ」 想像するだけで嫌になってくるけどな。 体力的にも気分的にも。 「凶暴な魔獣とかもいるから、危ないっスよ」 「う……。それは……、キツいな」 さっき襲ってきた巨大な猫もどき。 あんなのが何匹もいるんじゃ、生きて街まで辿り着く自信はないな。 弱肉強食という言葉の意味を、身を持って確認させられるのがオチだ。 「直哉さん。一週間くらい待てないっスか? そしたら、安全に街まで行ける方法があるっスけど」 「そりゃ、安全に行けるんなら待つのはかまわんけど」 「それなら、一週間ほど泊まっていってくださいっス。幸い、空き部屋はあるっスから」 いやいやいや。 「ちょっと待て。お前、それはいくらなんでもお人好しすぎやしないか?」 だってそうだろ? 道に迷った見知らぬ他人を家に泊めようとか、普通は思わん。 こんなこと考えるのは嫌だが、何か裏でもあるのかと思っちまう。 何の裏も無く、純粋に善意で言っているなら、それはそれで心配になるほどのお人好しっぷりだ。 「いくらなんでも、そこまで迷惑かけられねぇよ」 「迷惑なんてことは無いっスよ」 首を振って否定するセンギ。だが、常識的に考えて迷惑だろう。 それとも、この世界では他人を家に泊めることなんてごく当たり前のことなんだろうか。 この世界の文化を知らんから、なんとも言えんが。 「本当に迷惑なんてことは無いっスよ。どっちかっていうと、直哉さんを行かせた方が迷惑っス」 「と、いうと?」 「直哉さんが魔獣に襲われたりしてないかって心配が、心理的な負担になるっス。 それに、この辺りは立ち入り禁止の場所もたくさんあるっスから、そういう場所に入られると困るっス」 なるほど。つまり、 おれ 「何も知らない迷子が、そういう場所にふらふらと迷いこまないように監視が必要、と」 「そういうことっス。これでもこの辺りの管理人っスから。 もちろん、直哉さんを心配してるのも嘘じゃないっスよ」 なるほど。 そういう事情があるんなら、断る方が逆に迷惑になるな。 ここはお言葉に甘えさせてもらいますか。 ……無償の善意よりも何らかの理由があった方が安心する俺の心は、いい感じに汚れてるなー。 これが現代社会の歪みか! なんて戯言は置いといて。 「それじゃ、悪いけど泊めてもらっていいか?」 「ういっス。どうぞっス。お客さんが泊まるなんて久しぶりっスよ」 腕がなるっスね~、と上機嫌なセンギ。 なんでだか、やたらと楽しげだ。 というか、腕がなるって、なんでだ? 「そんなわけで、直哉さんがしばらく泊まることになったっスけど、ファリィもいいっスか?」 さっきから一言も喋っていない赤い髪の少女に、センギが問う。 ファリィはセンギを見て、俺を見る。そして再びセンギを見て、口を開いた。 「うん、いいよー。おにーちゃん、悪い人じゃないみたいだから」 「そうっスね。ファリィがそういうなら、ますます安心っス」 どういうことだ? まるで、センギ自身よりあの子の方が信用出来るみたいな言い方だが。 子供の直感は鋭いとか、そういう話かね。 ま、それはともかく、 「許可は貰えたみたいだな。少しの間だけど、世話になるな」 よろしく、と頭を下げる。 返ってきたのは、 「こちらこそ、よろしくっス」 「よろしくね、おにーちゃん」 天涯孤独(この世界では)の身としては、なんともありがたい返事だった。 PR
「おとーさん。この人、だれ? お客さん?」
「そうっスよ。この人は高畑直哉さん。ちょっと道に迷ったらしいっス」 少女の問い掛けに、頷いて答えるセンギ。 ……今聞き捨てならない単語を聞いた気がする。 「ちょっと待った」 「何っスか?」 「お父さん、ってどういうことだ?」 センギは俺と同じぐらいの年にしか見えない。 少女くらいの年の子供がいるのは、どう考えてもおかしいだろう。 「?」 「いや、そんな不思議そうな顔されても」 「おとーさんはおとーさんだよ?」 「いや、おかしいだろ、年齢的に?」 「???」 またも不思議そうな顔をする少女。 駄目だ。話が通じねぇ。 諦めてセンギの方へ顔を向ける。 野郎、苦笑と微笑みの中間みたいな顔してやがる。 「オレとファリィは血の繋がらない親子なんスよ」 ……ああ、そうか。ちょっと考えればわかることだな。 それに考えが至らないってことは、俺は自分で思ってるよりも混乱しているらしい。 まぁ、気付いたらいきなり見知らぬ土地、しかも地球かどうかも分からない場所に居たんだ。 無理もないだろう。と、自己弁護しておく。 「おにーちゃん、おにーちゃん」 俄かに頭痛すら感じ始めた俺に、少女――ファリィという名前らしい――が呼び掛ける。 「あ、あぁ、なんだ?」 「おにーちゃんは迷子なの?」 「ぐはっ!?」 た、確かに迷子っちゃあ迷子だが……。 こんな小さい子に言われると、情けなくなってくるな。 「いや、まあ、迷子、だな。うん」 ハハハと渇いた笑いが漏れる。 「えぇっと、直哉さんは何処の国の人っスか? 方角が分かれば、近くの街までなら案内出来るっスよ」 そんな俺を見かねたのか、フォローするように尋ねるセンギ。 何処って言われてもな。 一応、聞くだけ聞いてみるか。 「日本って国なんだが、知ってるか?」 「ニホン、スか? う~ん」 思いだそうとしてるのか、こめかみに手をあてて考えるセンギ。 これは、やっぱりあれだろうか。 「すいません。ちょっと聞いたことないっスね」 やはりか。んなこったろーと思ったけどな。 「んじゃ、アメリカとかロシアとかは? いや、むしろ地球ってわかるか?」 続けて質問を重ねる。まあ、だいたい答えは予想できるが。 質問と言うより、確認だな。 「ん~……、どれも聞いたことないっスね」 ほらな。さて、どうしたものか。 「あ~~、とりあえず俺の出身地は置いといてくれ。先に、此所が何処か教えてくれ」 「ここはガーラル火山の麓っスよ」 「ガーラル火山、ね」 ふむ。当たり前だが、聞き覚えはないな。 「ちょっと妙なことを聞くけど、いいか?」 「妙なことっスか? 別にいいっスよ」 それじゃ、遠慮なく。 これはある意味、最終確認だ。 「この世界は、なんていうんだ?」 「この世界の名は、“リークリフ”っスよ」 「……」 ガッテム。マジで異世界決定だな。 出来れば知りたくもなかったが。 「でも、なんでそんなこと聞くっスか?」 訝しげな顔で、疑問の声を上げるセンギ。 そりゃ不思議に思うよな。 普通、自分の生きてる世界の名前を尋ねる奴なんていねぇもんな。 だが、答えは簡単。 「ああ。どうにも、俺はこの世界の住人じゃねぇみたいだ」 「はい、どうぞっス」 礼を言って、少年が差し出したカップを受け取る。 中に入っているのは――青い液体だった。 青い。なんか青い。やたらと青い。 ここまで青い飲み物は見たことねぇ。 さすが地球外惑星(推定)。 「どうしたっスか? 飲まないっスか?」 飲んでも平気かどうか悩んでいると、少年が不思議そうに聞いてきた。 「ん、ああ。これ、このまま飲んで平気なのか?」 「平気っスよ。クンの実のジュースっスから、のどが渇いてる時には最高っスよ」 証明するように自分の分に口をつける少年。 どうやら普通に飲めるものらしい。 そうとわかれば、ためらう必要もない。 ありがたく飲ませてもらおう。 「――――ん、おお? なんだこれ。目茶苦茶美味いな」 「そっスか? 実は、これにはちょっと自信があるんスよ」 言うだけあって、マジ美味い。 清涼飲料に近く、口当たりと喉ごしがすげぇいい。 気付けば、カップは空っぽになっていた。 「っぷはー。いや美味かった。ありがとな」 「どういたしましてっス。おかわりはどうっスか?」 「いや、もういいわ。それより、聞きたいことがわりとたくさんあるんだが、いいか?」 「いいっスよ。オレにわかることなら、なんでも聞いてくださいっス。 えぇっと」 そこまで言って口ごもる少年。 …………そういえば、まだ名乗ってもいなかったな。 「直哉だ。高畑直哉」 「タカハタナオヤっスか。 家名があるってことは、貴族様っスか?」 「いや、別に貴族ってわけじゃない」 極々一般人だ。 「そうなんすか。でも……」 「俺の生まれた国じゃ、皆名字を持ってるもんなんだよ」 「そうなんスか」 感心したように何度も頷く少年。 「申し遅れたっス。オレはセンギっていうっス」 少年――センギは、何が嬉しいのかにこにこと笑顔を浮かべる。 「センギ、俺何かおかしなこと言ったか?」 「え? ああ、いやいや違うっスよ。ただ、人間と話すのは久しぶりだったっスから」 そうなのか。 まあ、こんな森の中じゃあまり人は来ないだろうしな。 「それじゃ、存分に会話を堪能してくれ。で、聞きたいことなんだが――」 「おとーさん、クンの実がなくなってる~」 俺の言葉を遮るように、子供特有の高い声が響いた。 扉を開けて部屋に入ってきた声の主は、燃えるような赤い髪をした少女だった。
「うぉー。疲れたぞー」
「毎度のことだな。で、どうした?」 「……どうした? どうしただと? どうもこうもねぇよ、ったく」 「またずいぶんとやさぐれているな」 「やさぐれもするっつーの。またお前の従姉妹に追い回されたんだよ」 「それはまた……。災難だったな」 「まったくだ。何なんだよ、あいつは。今回は俺、何もしてねぇぞ」 「ふむ。聞きたいのだが、以前は何故追われるようなことになったんだ? 彼女は知らない人間をいきなり襲うような性格ではないはずだが」 「あー? あー……、確かあいつがガラの悪い奴等にナンパされてたんだよ。 で、適当に追っ払ったら、余計なことするなっつわれたんだったか。 俺もかちんときてな。あとは売り言葉に買い言葉だ」 「なるほど。お前達の性格ならば、十分あり得るな」 「俺も頭に血がのぼってたのは否定しねぇけど、それにしてもしつこ過ぎだろ、あいつは」 「ふむ。……存外、気に入られたのかもしれんな」 「ああ? お前の従姉妹は気に入った人間を追いかけ回すのかよ?」 「そういうこともあるな。もちろん、相手にもよるが」 「何で俺は追いかけられるんだよ?」 「身体能力の高さと……、頑丈さか?」 「ふざけんな!? んな理由で追いかけ回されてたまるか!」 「だが、実際そんな感じだと思うぞ。いわば、トムとジェリーみたいなものだ」 「どっちがトムでどっちがジェリーかは聞かなくてもわかるな」 「いわずもがな、だな」 「まあ、それはいいわ。いや、よくはないけど置いとこう。 この間のは、やけにしつこかったんだよ。 おかげで、久しぶりに体力の限界ギリギリまで身体動かす羽目になったからな」 「ふむ。……それはいつの事だ?」 「っと……、たしか14日だったか」 「14日……。なるほど、おおよそ理解した。が、これは俺が言っていいものかどうか」 「ん? なんかわかったのか?」 「うむ。すまんが、俺の口から言う事は出来んが」 「なんだそりゃ?」 「いずれわかる。と、思う」 「??? ……まあいいや。疲れたから帰るわ、俺」 「ああ、ゆっくり休め」 「お~~」 「はーい。誰っスかー?」 扉を開けて出てきたのは、頭にバンダナを巻いた少年だった。 見る限りでは、人間に思える。 少なくとも、俺を追いかけ回した猫(?)みたいな獣ではない。 「うちに何かご用っスか?」 「あ、ああ。道に迷っちまってな。悪いんだが、この辺のことを教えて貰えないか?」 「迷った? この辺まで入ってくるなんて、珍しい人っスね」 片手で拝むようにして頼むと、少年はきょとんとした顔で答えた。 少年の口振りからして、どうやらこの辺りは人の来るような場所ではないらしい。 となると、 「ここから人里までは遠いのか?」 「んー、そうっスね。人の足だと、五日はかかるんじゃないっスかね」 思い浮かんだ懸念を聞くと、予想通りの答えが返ってきた。 マズいな。猛獣を警戒しながら五日間。とてもたどり着ける気がしない。 これからの困難さを思い、自然と眉がしかめられる。 そんな俺を見かねたのか、少年が声をかけてきた。 「立ち話も何っスから、とりあえずあがらないっスか?」 「いいのか?」 「うぃっス。お疲れのようっスから、飲み物とかも出すっスよ」 それはありがたい。もう喉はからからだ。 だが、 「見知らぬ人間を家にあげてもいいのか? 自分で言うのもなんだが、俺はかなり怪しいと思うぞ」 「いやぁ、久しぶりのお客さんっスから。それに、人を見る目には少し自信があるっスよ」 ……ならいいか。本人がいいと言ってるんだし、これ以上は蛇足だろう。 なにより、俺が腰を落ち着けたい。 「そっか。それじゃ、悪いけどお邪魔させてもらうわ」 「うぃっス。どうぞっス」 |
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