蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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「うぉー。疲れたぞー」
「毎度のことだな。で、どうした?」 「……どうした? どうしただと? どうもこうもねぇよ、ったく」 「またずいぶんとやさぐれているな」 「やさぐれもするっつーの。またお前の従姉妹に追い回されたんだよ」 「それはまた……。災難だったな」 「まったくだ。何なんだよ、あいつは。今回は俺、何もしてねぇぞ」 「ふむ。聞きたいのだが、以前は何故追われるようなことになったんだ? 彼女は知らない人間をいきなり襲うような性格ではないはずだが」 「あー? あー……、確かあいつがガラの悪い奴等にナンパされてたんだよ。 で、適当に追っ払ったら、余計なことするなっつわれたんだったか。 俺もかちんときてな。あとは売り言葉に買い言葉だ」 「なるほど。お前達の性格ならば、十分あり得るな」 「俺も頭に血がのぼってたのは否定しねぇけど、それにしてもしつこ過ぎだろ、あいつは」 「ふむ。……存外、気に入られたのかもしれんな」 「ああ? お前の従姉妹は気に入った人間を追いかけ回すのかよ?」 「そういうこともあるな。もちろん、相手にもよるが」 「何で俺は追いかけられるんだよ?」 「身体能力の高さと……、頑丈さか?」 「ふざけんな!? んな理由で追いかけ回されてたまるか!」 「だが、実際そんな感じだと思うぞ。いわば、トムとジェリーみたいなものだ」 「どっちがトムでどっちがジェリーかは聞かなくてもわかるな」 「いわずもがな、だな」 「まあ、それはいいわ。いや、よくはないけど置いとこう。 この間のは、やけにしつこかったんだよ。 おかげで、久しぶりに体力の限界ギリギリまで身体動かす羽目になったからな」 「ふむ。……それはいつの事だ?」 「っと……、たしか14日だったか」 「14日……。なるほど、おおよそ理解した。が、これは俺が言っていいものかどうか」 「ん? なんかわかったのか?」 「うむ。すまんが、俺の口から言う事は出来んが」 「なんだそりゃ?」 「いずれわかる。と、思う」 「??? ……まあいいや。疲れたから帰るわ、俺」 「ああ、ゆっくり休め」 「お~~」 PR 「はーい。誰っスかー?」 扉を開けて出てきたのは、頭にバンダナを巻いた少年だった。 見る限りでは、人間に思える。 少なくとも、俺を追いかけ回した猫(?)みたいな獣ではない。 「うちに何かご用っスか?」 「あ、ああ。道に迷っちまってな。悪いんだが、この辺のことを教えて貰えないか?」 「迷った? この辺まで入ってくるなんて、珍しい人っスね」 片手で拝むようにして頼むと、少年はきょとんとした顔で答えた。 少年の口振りからして、どうやらこの辺りは人の来るような場所ではないらしい。 となると、 「ここから人里までは遠いのか?」 「んー、そうっスね。人の足だと、五日はかかるんじゃないっスかね」 思い浮かんだ懸念を聞くと、予想通りの答えが返ってきた。 マズいな。猛獣を警戒しながら五日間。とてもたどり着ける気がしない。 これからの困難さを思い、自然と眉がしかめられる。 そんな俺を見かねたのか、少年が声をかけてきた。 「立ち話も何っスから、とりあえずあがらないっスか?」 「いいのか?」 「うぃっス。お疲れのようっスから、飲み物とかも出すっスよ」 それはありがたい。もう喉はからからだ。 だが、 「見知らぬ人間を家にあげてもいいのか? 自分で言うのもなんだが、俺はかなり怪しいと思うぞ」 「いやぁ、久しぶりのお客さんっスから。それに、人を見る目には少し自信があるっスよ」 ……ならいいか。本人がいいと言ってるんだし、これ以上は蛇足だろう。 なにより、俺が腰を落ち着けたい。 「そっか。それじゃ、悪いけどお邪魔させてもらうわ」 「うぃっス。どうぞっス」
「…………ふむ」
「おーっす。どした? 考え込んでるみてぇだけど」 「ああ。俺もお前に習って、報酬を現物で貰ったのだが」 「お、何貰ったんだ?」 「“文殊”という霊具だ」 「ぶっ。ちょ、スゲェもん貰ったな、おい」 「ああ。万能な上に貴重なものだから、正直どうしたものかと迷う」 「そりゃなあ。数があれば、時間移動すら出来る反則霊具だもんなぁ」 「貰っておいてなんだが、俺には過ぎたものだ。どうしたものか」 「んー、適当に使っちまえばいいんじゃねぇ? 使えば無くなるだろ、文殊って」 「仕事の報酬に頂戴したものだからな。無意味に使うのもためらわれるな」 「相変わらず義理堅えな、お前は」 「俺を信用して渡して貰ったものだからな。当然のことだ」 「んー。じゃ、ホントに必要な時まで取っとくんだな」 「やはりそうなるか……」 「そりゃそうだろ。いいじゃねぇか。御守り代わりに持っとけよ」 「……そう、だな。そうしておくか」 「ま、“仕事”や“祭り”をやってれば、わりとすぐに使うことになるだろ」 「かもしれんな。使うようなことは無い方がいいのだが」 「は、そりゃ無理だ。俺達に回されるようなのは、危険度はピカイチだぜ」 「違いないな」 「ま、お互い死なねぇように気をつけようぜ」 「そうだな。生きてさえいれば、どうとでもなるからな」 「だな。っと、俺はこれから“仕事”だわ。そんじゃな」 「ああ。では、またな」
肩で息をしながら、重くなった身体を引きずって歩く。
精々1km足らずとはいえ、全力を超えて走った反動で足の限界が近い。 「命あっての物種つっても、これはキツいぜ」 だが、座ってゆっくり休憩というわけにもいかない。 あんな猫(?)みたいな猛獣がいる森で無防備に座り込むほど、俺の神経は太くない。 ひとまず、どこか安全な所まで行かねば。 ……あるのか、安全な所? い、いやいや。まさかずっと危険な場所が続くってことはないだろ。 人の住んでいる所まで出れれば、何とかなるはず。 「しっかし、行けども行けども木ばっかりだな」 目に入るのは、木と葉、あと実。 木はやたらと背が高くて、ものによっては見上げても天辺が見えないのもある。 葉はかなり生い茂っていて、非常に青臭い。ところどころ、青い色が混ざってるのは見なかったことにしたい。 実は遥か上の方になっているのもあれば、俺の頭と同じくらいの高さになっているのもある。 喉が渇いてはいるが、さすがに食えるかわからん木の実を口に入れることはしない。 このまま迷って飢え死にしそうになったらわからんが。 それは最後の手段だ。 「とっとと森を抜けられるといいんだが。最後の手段に頼ることが無いように願う――っと」 突然目の前が開けた。 一瞬、森を抜けたのかと思ったが、すぐに違うとわかった。 目の前が開けたのは、そこだけ木が伐採されてるからで、 それはすぐそこに建っている家に使われているらしかった。 木造のそれなりに大きい家を見て、さてどうしたものかと少し迷う。 見た感じ無人ではなく、誰かが住んでいるであろう雰囲気ではある。 それはいい。むしろ、食べ物や水があると確信出来る分だけ素晴らしい。 問題は、だ。 中にいるのが人間ではなく、人外の何かだったらやだなぁ、ってことなんだが。 もし中に猫(?)がいやがったら、今度は逃げ切れる自信は無い。 「……ま、それでもスルーなんて選択肢はねえけどな」 呟きながら、扉へと近付く。 拳で数回ノック。 コンコンと軽い音が響く。 少しの間があり、中で何かが動く気配がある。 さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「おーす」
「ああ。……どうした?」 「なにがだ?」 「いつになく機嫌が良さそうだからな。何かあったのか?」 「やっぱわかるか?」 「ああ」 「実はな……、っと。これだこれだ」 「これは……」 「いいだろ。今回の“仕事”の報酬だ」 「一対の中華刀。……もしや、干将莫耶か」 「おう。投影魔術とやらで創ったバッタもんだけど、そこらの刀剣なんか目じゃねぇぞ」 「そのようだな。こうして持っているだけでも、かなりの力を感じる」 「だろ? 次の“仕事”では、こいつをメインで使うつもりだ」 「お前とは相性が良さそうだからな。良い選択かもしれんな」 「ああ。下手な装備を持っていくより、よっぽど心強いぜ」 「しかし、これほどのモノを投影するとは、かなり優れた魔術師なのだな」 「あぁいや、本人はまだまだ半人前だっつってたぞ。あと、魔術師じゃなくて魔術使いだそうだ」 「む? いまいち定義が判らんが……」 「あー……、確か、魔術を目的ではなく手段として扱う者、だったか」 「ふむ。“こちら”では魔術自体を目的にしているものはそう多くはないのだが」 「“あっち”だと、ほとんどが目的になっているらしいぞ」 「文化の違いだな」 「だな。魔術の隠匿の為に、大量殺戮とかもあるらしいぜ。 胸糞悪い」 「それは……。そんなところで魔術使いなどと……、大丈夫なのか?」 「いや、どっちかっつうと駄目だ。あいつ、猪突猛進型だから」 「まずいだろう、それは」 「まずいなぁ。ま、いざヤバイ時には助けに行くさ」 「気軽に言うが、そう簡単に“向こう”には行けないだろう?」 「そん時はよろしく頼むぜ」 「本当に気軽に言ってくれる。……だが、いいだろう。友の頼みだ。 その時は力を貸そう」 「おう、頼りにしてるぜ」 |
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