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蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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……早まったかもしれん。

突然、こことは別の世界から来ました、なんてどう考えても電波な奴じゃねぇか。
本気で余裕無いのな、俺。

ほら、センギの奴も唖然として――

「ああ、直哉さんは“来訪者”だったんスか。それなら、聞いたことない国なのも納得っス」

ねぇよ! 納得したように頷いてるよ!?

「って、どういうことだ?」

          この世界
「えっとっスね。リークリフには、時々余所の世界から迷い込む人がいるっスよ」

「そういう人達のことを“来訪者”って呼んでるんだよ」

センギの説明を継いで、ファリィが言葉を締める。
知っていることを教えるのが楽しいのか、その顔はやたらと楽しそうだ。

しかし、そうか。前例があるのか。

しかも、口振りからして、一度や二度ってわけでもなさそうだ。

「その“来訪者”達の中で、所在がわかってる奴はいるか?」

出来れば話を聞いてみたいんだが。
そんな俺の期待を裏切るように、センギは首を横に振った。

「オレも話で聞いたことがあるだけっスから。詳しいことはちょっとわかんないっスね」

「そうか……」

そうそう上手くはいかないか。

「すまないっスね」

「いや、謝ることはねぇよ。それどころか、感謝してるんだぜ。飲み物まで出してもらってるしな」

いやマジで。
色々と教えてもらったし、本気で助かってる。
この家が無かったら、休憩もままならなかったし。
だから、そんな申し訳なさそうな顔しなくていいって。

「飲み物ありがとな。美味かった。礼をしようにも、一文無しなのがアレなんだが」

「いや、お礼なんて結構っスよ。それより、直哉さんはこれからどうするっスか?」

「そうだな……」

どうするかな。右も左も分かんねぇからなぁ。
まぁ、とりあえずは、

「ここから歩いて五日かかるっていう街でも目指すかな」

人がたくさんいるとこ行けば、なんとかなるだろっていう浅い考えだが。
他にどうしようもないし。

「街までっスか? 歩くとかなりあるっスよ」

「そこは気合い入れて頑張るしかねぇなぁ」

想像するだけで嫌になってくるけどな。
体力的にも気分的にも。

「凶暴な魔獣とかもいるから、危ないっスよ」

「う……。それは……、キツいな」

さっき襲ってきた巨大な猫もどき。
あんなのが何匹もいるんじゃ、生きて街まで辿り着く自信はないな。
弱肉強食という言葉の意味を、身を持って確認させられるのがオチだ。

「直哉さん。一週間くらい待てないっスか? そしたら、安全に街まで行ける方法があるっスけど」

「そりゃ、安全に行けるんなら待つのはかまわんけど」

「それなら、一週間ほど泊まっていってくださいっス。幸い、空き部屋はあるっスから」

いやいやいや。

「ちょっと待て。お前、それはいくらなんでもお人好しすぎやしないか?」

だってそうだろ? 道に迷った見知らぬ他人を家に泊めようとか、普通は思わん。
こんなこと考えるのは嫌だが、何か裏でもあるのかと思っちまう。
何の裏も無く、純粋に善意で言っているなら、それはそれで心配になるほどのお人好しっぷりだ。

「いくらなんでも、そこまで迷惑かけられねぇよ」

「迷惑なんてことは無いっスよ」

首を振って否定するセンギ。だが、常識的に考えて迷惑だろう。
それとも、この世界では他人を家に泊めることなんてごく当たり前のことなんだろうか。
この世界の文化を知らんから、なんとも言えんが。

「本当に迷惑なんてことは無いっスよ。どっちかっていうと、直哉さんを行かせた方が迷惑っス」

「と、いうと?」

「直哉さんが魔獣に襲われたりしてないかって心配が、心理的な負担になるっス。
 それに、この辺りは立ち入り禁止の場所もたくさんあるっスから、そういう場所に入られると困るっス」

なるほど。つまり、

         おれ
「何も知らない迷子が、そういう場所にふらふらと迷いこまないように監視が必要、と」

「そういうことっス。これでもこの辺りの管理人っスから。
 もちろん、直哉さんを心配してるのも嘘じゃないっスよ」

なるほど。
そういう事情があるんなら、断る方が逆に迷惑になるな。
ここはお言葉に甘えさせてもらいますか。

……無償の善意よりも何らかの理由があった方が安心する俺の心は、いい感じに汚れてるなー。
これが現代社会の歪みか! なんて戯言は置いといて。

「それじゃ、悪いけど泊めてもらっていいか?」

「ういっス。どうぞっス。お客さんが泊まるなんて久しぶりっスよ」

腕がなるっスね~、と上機嫌なセンギ。
なんでだか、やたらと楽しげだ。
というか、腕がなるって、なんでだ?

「そんなわけで、直哉さんがしばらく泊まることになったっスけど、ファリィもいいっスか?」

さっきから一言も喋っていない赤い髪の少女に、センギが問う。

ファリィはセンギを見て、俺を見る。そして再びセンギを見て、口を開いた。

「うん、いいよー。おにーちゃん、悪い人じゃないみたいだから」

「そうっスね。ファリィがそういうなら、ますます安心っス」

どういうことだ? まるで、センギ自身よりあの子の方が信用出来るみたいな言い方だが。
子供の直感は鋭いとか、そういう話かね。
ま、それはともかく、

「許可は貰えたみたいだな。少しの間だけど、世話になるな」

よろしく、と頭を下げる。

返ってきたのは、

「こちらこそ、よろしくっス」

「よろしくね、おにーちゃん」

天涯孤独(この世界では)の身としては、なんともありがたい返事だった。

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「うおおぉぉぉ!」
「……」
「ぐううぅぅぅ!」
「……」
「おぉりゃあぁぁぁ!」
「……何をしてるんだ、天夜?」
「ああ? 見りゃわかんだろ」
「ふむ。俺には、鉄板のような馬鹿でかい剣を持ち上げようとしているように見えるが」
「分かってんじゃねぇか」
「一体どうしたんだ、この剣は? いや、そもそもこれは本当に剣なのか?」
「おう。人類の限界ギリギリの規格のグレートソードだ」
「たしかに“グレート”ではあるな」
「どこぞの神官戦士が使ってるのを見てな。“博士”に作ってもらった」
「ああ、なるほど。あの人なら、喜んで作りそうだ」
「そういうこった。嬉々として作ってたぞぉぉぉ!」
「で」
「あぁ?」
「持ち上がらないのか?」
「はっ、なめんな。俺にかかればこれくらい……」
「……」
「……」
「……上がらないんだな?」
「どちくしょおぉぉぉ!」
「しかし、天夜に扱えないほど重い剣を使うとは。その神官戦士は、余程の筋力の持ち主だな」
「女だったけどな」
「む?」
「しかも、少女って言われるくらいの年齢だった」
「は?」
「自信無くすぜ」
「う、む。いや、それはあくまで例外だろう」
「まあ、そうなんだがな。俺も腕力には自信あったんだけどなぁ」
「“強化”を使えば、扱えるだろう?」
「そりゃな。斬艦刀でも無いかぎり、扱えない武器はねぇよ。
 けどな、“強化”を使うと、なんか負けた気分になんだよなぁ」
「プライドの問題か」
「おうよ。鷹火も挑戦してみるか? いや、むしろ挑戦しろ」
「強制か。別に構わないが」
「よし。ほれ」
「む。…………無理だな、これは」
「諦めんの早ぇなオイ」
「そもそも、天夜に持ち上げられないものを俺が持ち上げられるわけないだろう」
「鷹火は武器使わねぇもんなあ」
「術がメインだからな」
「しっかし、どうすっかなコレ」
「まぁ、一応とっておいたらどうだ。誰か使える奴がいたら、くれてやればいい」
「そうだなぁ。使える奴がいたら、幾らかで売っ払うか」
「……タダで譲るわけではないのか」
「あったりまえだ。作るの高かったんだぞ」
「もう少し金の使い方は考えた方がいいぞ」
「わかっちゃいるんだけどなー。とりあえず、金稼いでくるわ」
「“仕事”か?」
「いや、たんなるバイトだ。んじゃ、遅刻するからもう行くな」
「ああ、行ってこい」
「おとーさん。この人、だれ? お客さん?」

「そうっスよ。この人は高畑直哉さん。ちょっと道に迷ったらしいっス」

少女の問い掛けに、頷いて答えるセンギ。
……今聞き捨てならない単語を聞いた気がする。

「ちょっと待った」

「何っスか?」

「お父さん、ってどういうことだ?」

センギは俺と同じぐらいの年にしか見えない。
少女くらいの年の子供がいるのは、どう考えてもおかしいだろう。

「?」

「いや、そんな不思議そうな顔されても」

「おとーさんはおとーさんだよ?」

「いや、おかしいだろ、年齢的に?」

「???」

またも不思議そうな顔をする少女。
駄目だ。話が通じねぇ。

諦めてセンギの方へ顔を向ける。
野郎、苦笑と微笑みの中間みたいな顔してやがる。

「オレとファリィは血の繋がらない親子なんスよ」

……ああ、そうか。ちょっと考えればわかることだな。
それに考えが至らないってことは、俺は自分で思ってるよりも混乱しているらしい。
まぁ、気付いたらいきなり見知らぬ土地、しかも地球かどうかも分からない場所に居たんだ。
無理もないだろう。と、自己弁護しておく。

「おにーちゃん、おにーちゃん」

俄かに頭痛すら感じ始めた俺に、少女――ファリィという名前らしい――が呼び掛ける。

「あ、あぁ、なんだ?」

「おにーちゃんは迷子なの?」

「ぐはっ!?」

た、確かに迷子っちゃあ迷子だが……。
こんな小さい子に言われると、情けなくなってくるな。

「いや、まあ、迷子、だな。うん」

ハハハと渇いた笑いが漏れる。

「えぇっと、直哉さんは何処の国の人っスか? 方角が分かれば、近くの街までなら案内出来るっスよ」

そんな俺を見かねたのか、フォローするように尋ねるセンギ。
何処って言われてもな。
一応、聞くだけ聞いてみるか。

「日本って国なんだが、知ってるか?」

「ニホン、スか? う~ん」

思いだそうとしてるのか、こめかみに手をあてて考えるセンギ。
これは、やっぱりあれだろうか。

「すいません。ちょっと聞いたことないっスね」

やはりか。んなこったろーと思ったけどな。

「んじゃ、アメリカとかロシアとかは? いや、むしろ地球ってわかるか?」

続けて質問を重ねる。まあ、だいたい答えは予想できるが。
質問と言うより、確認だな。

「ん~……、どれも聞いたことないっスね」

ほらな。さて、どうしたものか。

「あ~~、とりあえず俺の出身地は置いといてくれ。先に、此所が何処か教えてくれ」

「ここはガーラル火山の麓っスよ」

「ガーラル火山、ね」

ふむ。当たり前だが、聞き覚えはないな。

「ちょっと妙なことを聞くけど、いいか?」

「妙なことっスか? 別にいいっスよ」

それじゃ、遠慮なく。
これはある意味、最終確認だ。

「この世界は、なんていうんだ?」

「この世界の名は、“リークリフ”っスよ」

「……」

ガッテム。マジで異世界決定だな。

出来れば知りたくもなかったが。

「でも、なんでそんなこと聞くっスか?」

訝しげな顔で、疑問の声を上げるセンギ。
そりゃ不思議に思うよな。
普通、自分の生きてる世界の名前を尋ねる奴なんていねぇもんな。

だが、答えは簡単。

「ああ。どうにも、俺はこの世界の住人じゃねぇみたいだ」
「俺の拳が光って唸る~♪」
「えらくご機嫌だな、天夜」
「おう。……って、どうした。いきなり名前で呼んだりして?」
「ああ。そろそろ名前を決めた方がいいと作者が思ったからたまにはいいだろう」
「メタなことを……。まあいいや。それなら、お前も名前で呼んだ方がいいか。なあ、鷹火(おうか)」
「そうだな。その方が区別しやすい呼びやすい方で構わん」
「鷹火……。今日はやたらメタ発言が多いな、オイ」
「ふむ……。……少し術式を失敗したからな。そのせいかもしれん」
「……いや、関係あるのか、それ?」
「無いことも無い。失敗したのは召喚の術式だったからな。どこか変な場所に繋がった可能性もある」
「危ねえなぁ。眠れる邪神とか起こしたりすんなよ?」
「善処しよう。それで話は逸れたが、機嫌が良さそうだったのは何かあったのか?」
「おう。ちょっと用事で池袋まで行って来たんだけどな。そこでおもしろい催しがやってたんだよ」
「天夜がおもしろいと言うものだと……、格闘関係か?」
「当たりだ。バイパーズレイブっつうアマチュア挌闘家達の集いだ」
「それはまた、天夜が好きそうな催しだな。当然、参加したんだろう?」
「おう。参加資格とかは無いらしくてな。途中から飛び入り参加だ。いやー、楽しかった」
「それはなによりだ。しかし、天夜の相手になるような奴などいたのか?」
「おう。何人かおもしろい奴等がいたぜ」
「天夜をしておもしろいと言わせるような奴が、何人もいるのか。……凄まじいな」
「高校生くらいのやつが多いんだけどな。中でも、草薙静馬ってのがずばぬけてたな」
「ほう。……闘ったのか?」
「おう。引き分けた」
「何……? それは、本気でたいしたものだな」
「神威の技を使ってたしな。武器無しならこんなもんだ」
「高校生で神威を? ……それは放置していてもいいのか?」
「あー……。ま、平気じゃね? そんな悪い奴じゃねぇし」
「……ふぅ。楽観的だな」
「不満か?」
「いや、天夜がそう言うのならば、それでいい」
「そか?」
「ああ」
「そか。んじゃ、俺はそろそろ行くわ。次の仕事や“祭”の準備しなきゃなんねぇからな」
「ああ。では、またな」
「おう。またな」

「はい、どうぞっス」

礼を言って、少年が差し出したカップを受け取る。
中に入っているのは――青い液体だった。

青い。なんか青い。やたらと青い。

ここまで青い飲み物は見たことねぇ。
さすが地球外惑星(推定)。

「どうしたっスか? 飲まないっスか?」

飲んでも平気かどうか悩んでいると、少年が不思議そうに聞いてきた。

「ん、ああ。これ、このまま飲んで平気なのか?」

「平気っスよ。クンの実のジュースっスから、のどが渇いてる時には最高っスよ」

証明するように自分の分に口をつける少年。
どうやら普通に飲めるものらしい。
そうとわかれば、ためらう必要もない。
ありがたく飲ませてもらおう。

「――――ん、おお? なんだこれ。目茶苦茶美味いな」

「そっスか? 実は、これにはちょっと自信があるんスよ」

言うだけあって、マジ美味い。
清涼飲料に近く、口当たりと喉ごしがすげぇいい。
気付けば、カップは空っぽになっていた。

「っぷはー。いや美味かった。ありがとな」

「どういたしましてっス。おかわりはどうっスか?」

「いや、もういいわ。それより、聞きたいことがわりとたくさんあるんだが、いいか?」

「いいっスよ。オレにわかることなら、なんでも聞いてくださいっス。
 えぇっと」

そこまで言って口ごもる少年。

…………そういえば、まだ名乗ってもいなかったな。

「直哉だ。高畑直哉」

「タカハタナオヤっスか。
 家名があるってことは、貴族様っスか?」

「いや、別に貴族ってわけじゃない」

極々一般人だ。

「そうなんすか。でも……」

「俺の生まれた国じゃ、皆名字を持ってるもんなんだよ」

「そうなんスか」

感心したように何度も頷く少年。

「申し遅れたっス。オレはセンギっていうっス」

少年――センギは、何が嬉しいのかにこにこと笑顔を浮かべる。

「センギ、俺何かおかしなこと言ったか?」

「え? ああ、いやいや違うっスよ。ただ、人間と話すのは久しぶりだったっスから」

そうなのか。
まあ、こんな森の中じゃあまり人は来ないだろうしな。

「それじゃ、存分に会話を堪能してくれ。で、聞きたいことなんだが――」

「おとーさん、クンの実がなくなってる~」

俺の言葉を遮るように、子供特有の高い声が響いた。
扉を開けて部屋に入ってきた声の主は、燃えるような赤い髪をした少女だった。


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