蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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木の表面のでこぼこに手をかけ、足をかけ、少しずつ上へと登っていく。
木登りなんて本当に久しぶりだが、意外といけるもんだ。 あっという間にクンの実が成っている近くまでこれた。 近くで見ると、かなりデカイ。 ハンドボールくらいはある。 触れてみると、中々に固い。 蔦になっているからブドウに近いのかと思ったんだが、触った感じや見た目からするとヤシの実に近い。 蔦に繋がっている部分が存外頑丈で苦労したが、なんとかねじ切る。 「って、重っ!」 あまりの重さに危うく取り落としそうになったが、なんとか堪える。 下にはファリィがいるんだ。 こんな凶器みたいな重さの実を落とすわけにはいかない。 「おにーちゃん、だいじょうぶー?」 クンの実を取り落としかけた俺に向かって、ファリイの声が飛んできた。 「ああ、大丈夫だ!」 ファリイに答えながら、持っているクンの実を掲げてみせる。 「で、この取った実はどうすればいい?」 籠は登るのに邪魔だから下に置いてきちまったし。 「こっちにおとしてー。わたしがひろうからー」 まじか。クンの実は、ここから地面に落としても平気なくらい頑丈なのか。 ファリイは籠を持ち上げて、準備万端といった様子だ。 「それじゃ落とすけど、気をつけろよー」 「はーい」 ファリイに当てないように気を付けて――投下。 真っ逆さまに落下し、地面にめり込むクンの実。 それを軽々と拾って籠に入れるファリイ。 ……うん? 軽々と? …………。 ためしに、もうひとつクンの実をねじ切る。 手に伝わる、ずっしりとした重量感。 うむ、重い。 「もう一個落とすぞー」 一言かけて、投下。 地面にめり込むクンの実。 ひょいと持ち上げて、籠に入れるファリイ。 …………。 「ファリイ。重くないのか、それー?」 「そんなにおもくないよー」 むう。もしかして、腕力でもファリイに負けてるのか、俺。 男としてのプライドを傷つけられながら、2個、3個と下に落とす。 そして、次の実を取ろうとした時、グニュリ、と異様な感触が手に伝わった。 「……あ?」 見れば、そこには形容し難いナニかがいた。 ソレは強いていうならば、イソギンチャクに近かった。 巾着袋に似た本体部分から、子供の腕くらいはある触手が何本も伸びている。 その内の一本を、俺の手が掴んでいた。 「うおっ!?」 キモッ! 慌てて掴んでいた触手を放す。 手にねとねとした粘液が残ったのが、凄まじく気持ち悪かった。 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、イソギンチャクもどきはこっちに触手を伸ばしてきた。 「おっとと」 咄嗟に身をかわす。 いや、ビジュアル的に気持ち悪いし。 しつこく伸びてくる触手をかわしながら、下にいるファリイに聞く。 「おーい、ファリイ。こいつは何なんだ?」 「えーっとねー、その子はパラリアスっていってね。クンの実のちかくにすんでるのー」 ほー、さよかー。 「で、そのパラリアスとやらは、なんで俺に向かって触手を伸ばしてくるんだ?」 場所も悪いし、いい加減かわし続けるのも辛いんだが。 「んーっとねー、たぶん、おなかがへってるんだとおもうよー」 ……なんですと? 言われてみれば、触手を伸ばしてくるのは、捕食行動といえる。 何回かわされても諦めないのは、命がかかっているからか。 なるほど、なるほど。 って、ダメじゃねえか! 俺はまだ食物連鎖の下位に組み込まれる気はねぇぞ。 そんな風に焦ったのがまずかったのか、ずる、と足を滑らしてしまった。 一瞬の浮遊感。 次の瞬間には、軽い衝撃が伝わり、俺の目線は先程までよりずいぶんと低くなっていた。 「おにーちゃん、だいじょうぶ?」 「……お?」 ファリイの声が、ずいぶんと近くから聞こえる。 具体的にいうと、すぐ下から。 見れば、ファリイはその小さな両手で俺の身体を支え持っていた。 しかも軽々と。 ……マジか。 「おにーちゃん?」 「あ、ああ。大丈夫だ」 男としてのプライドを微妙に粉砕されつつ、地面に降りる。 いやホント、この娘の身体はどんな仕組みになってるんだろうな。 機会があれば聞くとして、今はとりあえず 「逃げるか」 ファリイの手を取って走り出す。 「わわっ?」 急に走り出したせいで躓きかけたファリイは、しかしすぐに立て直してついてくる。 俺たちが走った後を、何本もの触手が追ってくる。 その光景は、まさしくファンタジーだった。嫌な方向で。 PR |
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