蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 チャイムの音が校舎に響く。 今日の授業は全部終わり、今は放課後だ。 既にほとんどのやつが教室からいなくなっている。 俺はといえば、ワケあって未だに席に座ったままだ。 「直人くーん、一緒に帰ろ?」 座ったまま動かない俺に、高町がをかけてきた。 高町の後ろには、バニングスと月村もいる。 学校から帰るときのいつもの面子だ。 「おう。けど、ちょっとだけ待ってくれ」 俺がそう言うのと同時、ポケットの携帯が鳴り出した。 三人に一言断ってから携帯を開く。 メールが一件届いている。 親父からだ。 『直人へ。 仕事がひと段落ついたから、今日の夕飯は父さんが作るよ。 楽しみにしててくれ』 読み終えて、携帯をたたむ。 待っててくれた三人に顔を向け、 「うっし、待たせた。それじゃ、帰るか」 そう言って、ようやく席から立ち上がった。 「でもアンタ、大丈夫なの?」 四人での帰り道の途中、バニングスがそんなことを言い出した。 「何がだ?」 「アンタ、いつもだったら、そろそろ走って帰る頃じゃない」 「直人くん、いつも途中で先に行っちゃうもんね」 バニングスと月村が続けて言う。 たしかに、いつもだったら走って先に行く時間だ。 スーパーに。 夕飯の材料買いに。 ……なんか、小学生としては間違っている気がしないでもないが。 仕方ないのだ。 なぜなら、俺がやらないと、やる人間がいないから。 親父は基本的に仕事で忙しいし、兄貴は頻繁に厄介事に巻き込まれるのであてにできない。 飯抜きになりたくなければ、自分で何とかするしかないのである。 とはいえ、 「今日は親父が飯作ってくれるらしいからな。急いで帰る必要はねぇし」 珍しいことにな。 「へ~。おじさんがごはん作るんだ」 「おう、ホント久々にな」 「って、直人のパパって料理できたの!?」 何故そこまで驚く、バニングス? 「出来るもなにも、うちで一番料理が上手いのは親父だぞ。以前、うちで出したおやつのクッキー。あれも親父が作ったやつだし」 「「「ええ!?」」」 バニングスだけでなく、揃って驚きの声を上げる三人娘。 仲いいな、お前等。 「あのクッキー、おじさんが作ったの!? うちのとおんなじくらい美味しかったよ!?」 「おー、それを聞いたら親父喜ぶわ」 高町の家は喫茶店をやっていて、その評判はすこぶる良い。 それと同じくらいの味ってのは、なかなかにすごいんじゃないだろうか。 そんなことを話しながら歩いていると、 ――……けて―― 何か、聞こえた気がした。 「なあ、今何か聞こえなかったか?」 「何かってなによ?」 「別になにも聞こえなかったよ?」 どうやら、バニングスと月村には聞こえなかったらしい。 一人返事をしなかった高町にも聞こうとしたところで、 ――助けて……!―― 「!」 また聞こえた! しかも、さっきよりもはっきりと。 とっさに、声の聞こえてきた方へと方向転換。 「ちょっと! ふたりともどこいくのよ!」 バニングスの言葉で、高町も俺と同じ方へ進んでいるのに気がついた。 高町は謎の声に気を取られているようなので、バニングスには俺が返事をする。 「なんかな、こっちから声が聞こえてきたんだ」 わりと切羽詰まった感じの。 俺の感覚が確かなら、声の主はかなりやばい状態のはずだ。 以前、疲労困憊のうえ全身打撲な状態の兄貴が出していた声が、ちょうどこんな感じだった。 少なくとも、助けが必要な程度には大変な状態なんだろう。 だとしたら、さすがに放っておくワケにはいかないだろ。 「たしか、この辺から聞こえたはず……」 周囲を見渡すが、人の姿は見あたらない。 その代わりとでもいうように、ぼろぼろな姿の動物がいた。 「何だ、こいつ? ……イタチか?」 そのイタチ(仮)は近づいてきた俺に気付いたのか、よろよろと顔を持ち上げた。 「……直……人、くん。その、子……は?」 様子を見ようとイタチ(仮)に手を伸ばしかけたところで、息も絶え絶えな高町が話しかけてきた。 どうやら、気付かないうちに追い抜いてしまったらしい。 不得意な運動に息を荒げながらも、イタチ(仮)を見つけて心配そうな顔をする高町。 息が整うのを待つのももどかしそうに、イタチ(仮)を抱き上げようと手をのばす。 イタチ(仮)は警戒するでもなく抱き上げられ――、力尽きたように気を失った。 「た、大変! どうしよう、直人くん!」 どうしようもくそも、 「とりあえず、病院だろ。バニングス、月村、この辺に獣医ってねえか?」 追いついてきた二人に尋ねる。 二人とも何匹も犬猫を飼ってるんだし、獣医の場所くらい知ってるだろ。 ちなみに、俺は知らん。動物を飼うような余裕はないし。 「いきなりなにを……って、どうしたのよその子!」 「さあ? 強いて言うなら、行き倒れか? で、獣医の場所は?」 「あ、うん。あっちにあるよ」 「さすがだ、月村。んじゃ、さっさと病院に連れていこう。見た感じ、そんなに余裕はなさそうだ」 PR ![]() ![]() |
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