蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 走る。走る。走る。 後ろから迫ってくるイソギンチャクもどきに追い付かれないように、必死に足を動かす。 ってか、何なんだあれは! 外見からは想像できないほど動きが速いんだが!? しかも、時折伸びてきた触手が身体を掠めるし。 心臓に悪いって。 チラリと手を繋いでいるファリィの方を見る。 …………。 何か、平気な顔で走ってる。 俺、全力に近い速さで走ってるんだが……。 「うお!?」 「きゃっ!?」 余所見をしたのが悪かったのか、窪みに足を引っ掛けてスッ転んでしまった。 咄嗟にファリィを受け止めることには成功したが、 「~~~~! こ、腰打った……」 しかも追い付かれた。 目の前で触手を蠢かせるイソギンチャクもどき。 その姿は、夢に出てきそうなほど気色悪い。 思わず頬がひきつる。 腕の中にいるファリィを見ると、何故か平然としている。 …………そうか! アイツをどうにかする手があるんだな? 半分くらいは俺の希望からの判断だが、そう間違ってもいないと思う。 「ファリィ、アイツを追い払えないか?」 俺の期待を込めた台詞に、ファリィは首を傾げてこちらを見上げた。 「あの子を?」 「ああ、どうにかならないか?」 「うん、できるよ」 こくりと頷くファリィ。 よし、やっぱりか。 「頼む。追い払ってくれ」 「うーん」 考えるように唸るファリィ。 こうやって話してる間にも、触手はうねうねと近付いてくる。 「ファリィ」 「うん、わかった。おにーちゃんのおねがいなら、しょうがないね」 そう言って立ち上がり、ファリィはイソギンチャクもどきに相対する。 そして一言、 「ごめんね」 と謝り――――火を吹いた。 「……は?」 ファリィの小さな口から吹き出された火は何本かの触手を呑み込み、一瞬で焼き尽くす。 触手を焼かれて怯んだのか、イソギンチャクもどきは一度大きくその身を震わせ、逃げるように去っていった。 俺はそれを呆然と見送り、イソギンチャクもどきの姿が見えなくなった頃にようやく我に帰った。 「おいおいおい、一体何の冗談だよ……」 口から火を吹くとか、大道芸でしか見たことねぇぞ。 それだって、あんなにデカイ火じゃない。 そこまで考えて、ふと心配になった。 「ファリィ、お前、大丈夫なのか?」 「ほぇ? なにが?」 「何がって、火なんか吹いて、口の中火傷とかしてないか?」 きょとんとした顔をしていたファリィだったが、続く俺の言葉に不機嫌そうな顔になった。 「む~~」 「ど、どうした? やっぱりどこか痛いのか?」 「ちがうよー。わたしはこれでもかりゅうだもん。じぶんのいきでやけどなんかしないもん」 不満そうに頬を膨らませるファリィ。 その姿には微笑ましいものを感じるが、何やら聞き逃せない単語があった気がする。 「火竜……?」 「うん、かりゅう」 「火竜ってあれか? ドラゴン?」 「うん、ファイアドラゴンっていうよ」 「……」 「……」 ……。 「マジで!?」 「まじ?」 「ああ、いや……本当に?」 「むー、うたがってる……」 そりゃあなあ。 目の前のちっこいのがドラゴンだって言われてもな。 でも、火を吹いたんだよなあ。 「おにーちゃん、みたらしんじる?」 「ん、ああ。さすがに自分の目で見たものは信じるな」 そこまで頭固くはないぞ。 ファリィはうん、と頷き、 「わかった。それじゃ、みせるね」 そう言うと、目を瞑った。 「見せるって」 何を、と聞く前に、ファリィに異変が起こる。 小さな体躯が赤い光に包まれた。 いや、……違う。 ファリィの身体自体が赤く発光している、のか? 光はどんどん強くなり、ファリィの姿は輪 郭以外を視認するのが難しくなっていく。 「おいおい……」 異変は続く。 人型の赤い光となったファリィが、今度はその輪郭を変えていく。 大きく、そして明らかに人にあらざる形に。 やがて光が収まり、ファリィがいた場所には、一体の赤いドラゴンの姿があった。 PR |
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