蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
[1]
[2]
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「っ、~~~~!」
声も出ない痛みに、悶絶する。 痛みの走る頭を押さえると、たんこぶができていた。 痛すぎて言葉も出せずに蹲る。 十秒ほどじっとしていると、少しだけ痛みが和らいできた。 「……んなんだよ、ちくしょう」 電信柱に頭をぶつけるという不条理に、愚痴が口をついて出る。 目の奥に映るのは、恒例の光。 ……頭をぶつけた原因だ。 前触れなしにいきなり光るのは勘弁してほしい。 「あー……、いてえ」 たんこぶをさすりながら、意識を光へと向ける。 「お。結構近いんじゃないか、これ?」 桃色と翠色と無色の光。 無色の光ってのも変な話だけど、そうとしか言いようがないのだから仕方がない。 とにかく、三つの光が同じ場所に集まっている。 その場所も、そんなに遠くではなさそうだ。 歩いて30分もかからないくらいだろう。 「……行ってみるか。暇だし」 30分後、町は廃墟と化していた。 「……いや、なんでだっ!?」 俺の胴くらいもある木の根が、地面や建物もお構い無しに蠢く。 遥か彼方には、スケールの狂った巨木の姿が。 「おいおい……。なんだよ、これ?」 崩れた建物の上でその光景を見て、呆然と呟く。 街がどんどん壊れていく光景は、あまりに非常識で酷く現実感が無かった。 これで悲鳴が響いていたら軽く地獄絵図だな、と麻痺した頭でぼんやりと思う。 …………まて。 なんで悲鳴が聞こえない? というか、人がいない? ショッキングな光景を目にしたせいで今まで気付かなかったが、これだけ街が壊されているのに、悲鳴や怒号のひとつも聞こえてこない。 慌てて辺りを見回すと、人の姿が全く無いことに気付いた。 「マジで、なんなんだよ……」 怖い。 マンガやアニメならよく見るようなシチュエーションだけど、実際に体験するとめちゃめちゃ怖い。 どうしよう。 走って逃げたい気分でいっぱいだけど、迂濶に動くと、あの木の根がこっちに来そうな気がする。 気のせいかも知れないが、試す気にはなれない。 でも、このままじっとしてれば安全、ってわけでもないしなあ。 どうしたものかと途方にくれていると、 「眩しっ!?」 また、あの光が目を焼いた。 眩しさは一瞬で消え、まぶたの裏には三色の光点が残った。 ピンク、翠、青。 三つの光点は、今までで一番近くに感じられる。 その内のピンクから、同色の小さな光が出てきたのが視えた。 何かと思い、ピンクの光点のある方を向くと、 「……は?」 魔法少女がいた。 しかも、クラスメイトだった。 「はああ!?」 衝撃だった。 ある意味、彼方に見える巨木よりも衝撃だった。 追い討ちに、魔法少女――高町が持つ杖から、ぶっといピンクの光が発射された。 ピンクの光線は巨木に向かって直進し、途中にあった根っこや枝を軒並み消し去った。 「ヲイヲイ」 俺の中での高町への評価の変動が著しすぎる。 クラスメイト→魔法少女→魔砲(!?)少女。 小豆相場もびっくりの変動だ。 光線の直撃を受けた巨木に向かって、高町は続けて光の帯を放つ。 光の帯が触れると巨木は発光し、次の瞬間には跡形も無くなっていた。 もう、何がなんやら。 驚くことが多すぎて、正直頭がパンクしそうだ。 ただ、ひとつだけわかることがある。 それは、 「もうここから動いても、問題無いってことだな」 高町に色々と聞きたいことはある。 が、なんかもういっぱいいっぱいだから、今日のところはばっくれよう。 これ以上非常識な事実を知ってしまうと、俺の常識が崩壊の危機だ。 聞いたところで、高町も正直に答えてくれるか分からんし。 機会があれば、その時に問いただそう。うん。 そんな風に言い訳しながら、俺はその場から逃げ出した。 PR 「うぬぅ……」 机に突っ伏すと、押し出されるように呻き声がもれた。 ――……けて―― ん? 「親父、何か言ったか?」 「うん? いや、何も言っていないよ」 「そっか」 空耳か? 唐突だが、魔法というものを信じている小学生はどれくらいいるだろうか。 一年生なら、まだ信じているやつはいるかもしれない。 二年生だと、ほとんどのやつが空想の産物だとわかっているはずだ。 三年生、つまり俺の年になると、もはや常識だろう。 ところが、だ。 俺は今、目の前の光景に常識を覆されている。 同級生が呪文を唱えると光に包まれ、光が収まった時にはさっきまでとは全く違う格好に変わっていた。 その手には、どこから現れたのか、なんというか、こう、リリカルな感じの杖が。 その姿は、簡単に言えば“魔法少女”だった。 「…………えー」 いやー……、何なんだこれ? チャイムの音が校舎に響く。 今日の授業は全部終わり、今は放課後だ。 既にほとんどのやつが教室からいなくなっている。 俺はといえば、ワケあって未だに席に座ったままだ。 「直人くーん、一緒に帰ろ?」 座ったまま動かない俺に、高町がをかけてきた。 高町の後ろには、バニングスと月村もいる。 学校から帰るときのいつもの面子だ。 「おう。けど、ちょっとだけ待ってくれ」 俺がそう言うのと同時、ポケットの携帯が鳴り出した。 三人に一言断ってから携帯を開く。 メールが一件届いている。 親父からだ。 『直人へ。 仕事がひと段落ついたから、今日の夕飯は父さんが作るよ。 楽しみにしててくれ』 読み終えて、携帯をたたむ。 待っててくれた三人に顔を向け、 「うっし、待たせた。それじゃ、帰るか」 そう言って、ようやく席から立ち上がった。 |
カレンダー
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
蒼夜
性別:
非公開
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
|