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蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
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父さん。俺は今、伝説に出会っています。





赤い鱗に覆われたその身体。
ナイフのような鋭い爪と牙。
身体に匹敵する大きな羽。

その姿は、どこからどう見ても、

「ど、ドラゴン……?」

だった。

こっちの世界ではどうかしらないが、地球では伝説級――というか想像上の生き物だ。

つまり、俺は今、伝説と向かい合っている!

……それはともかく、

「ファリィ、だよな……?」

いや、変身してるとこ見てたから、ファリィだってことはわかってるんだ。
わかってはいるんだが、5メートルを越す目の前の存在を見ると、ちょっと不安になる。

『うん、そうだよ』

だから、ファリィの声が頭の中に響いてきた時は、安心した。んで、驚いた。

「おお? なんだ、これ?」

『このかっこうのときは、うまくしゃべれないの。だから、おにーちゃんのあたまにちょくせつはなしかけてるんだよ』

テレパシーってやつか。

「しっかし、なんつうか」

『? なに?』

うん、

「その身体でファリィの声だと、違和感がすごいな」

考えてもみてほしい。
羽根の生えたでかいトカゲから、幼い子供の声が聞こえてくるのだ。
一歩間違えればホラーである。

『え~~。そんなにへん?』

「いや、別に変ってわけじゃ……。いや、うん、変だわ」

『むう~』

「唸られてもなぁ」

変なのは変だし。

「しっかし、ドラゴンかぁ。……すげえなあ」

『すごい? わたしすごい?』

「ああ、すごいな」

『えへへ~』

「うお!?」

照れたファリィがばさばさと翼を動かす。
感覚としては犬が尻尾をふるのに近いんだろうが、規模というか身体の大きさが違う。
っていうか、風圧がすごい。

「ぶ、ちょ、ま……。す、ストップストップ! ファリィ!」

『? あ、ごめんね、おにーちゃん』

俺の必死の訴えに、翼を動かすのを止めるファリィ。
とたんに感じていた風圧もぴたりと止まる。

「ふ、吹き飛ぶかと思った……」

傘とかマントとかあったら、確実に吹っ飛んでたな。

『大丈夫?』

こっちを見ながら、ファリィは小首を傾げる。
まだ微妙に違和感は感じるが、愛嬌も感じるな。
なんていうか、しぐさが小動物ちっくなんだよな。

「あ、ああ。大丈夫だ」

『ごめんね?』

「気にすんな。……と」

ふと、思いついた。

「ファリィ。お前、その羽根で空飛べるか?」

『うん、とべるよー』

よし。なら、

「俺を乗せてもいけるか?」

『おにーちゃんをのせるの?』

「ああ、どうだ?」

『ん~~』

どきどき。
どうだろうか。
5メートルを越す竜の体とはいえ、まだ幼いファリィには辛いか?

『おにーちゃんならべつにいいけど。でも、なんでわたしにのりたいの?』

どうやら全然問題ないみたいだな。
しかし、何故乗りたいか、だと?

「それはな――男のロマンだからだ!」

空を飛ぶというのは、重力に縛られた全ての人類共通の夢。
男の子なら、一度は飛行機のパイロットに憧れたはず。
重力という戒めからの解放は、即ち魂の解放なのだ!

「とまあ、そんなわけだ」

『う~ん。よくわかんないけど、おにーちゃんがすごくそらをとびたがってるのはわかった』

「それがわかってもらえれば、だいたいオッケーだ」

『おっけー?』

「問題ないってこと」

『ふ~ん』

……不思議なんだが、なんで言葉は通じるのに、英語は通じないんだ?
あれか? 和製英語だからか?

まあ、そんなことはどうでもいい。
今は、あの大空に飛び立つ方が大事だ。

「それじゃ、乗せてもらっていいか、ファリィ?」

『あ、うん。はい、どうぞ』

乗りやすいように屈んでくれるファリィ。
それでもその身体は結構高く、子供ではまず届かないような高さだ。

「よっ、と」

ファリィの身体に手をかけ、勢いをつけて一気に上る。

『おにーちゃん、のれたー?』

「おお、乗ったぞ」

『じゃ、たつね』

「お? おっと」

ファリィが屈んでいた状態から身体を起こす。
その揺れで危うく落ちそうになったが、なんとかバランスを取って堪える。

「おおー……」

立ち上がったファリィの背中から見る景色は、中々に面白い。
人間より遥かに高いこの視点は、象の上から見る景色に近いんじゃないかと思う。

『それじゃ、とぶよー。しっかりつかまっててね』

「よーし、ばっちこい!」

返事をした次の瞬間、俺は大空の中にいた。

「おおぉぉぉぉぉ!? はっやー!?」

どんな上昇スピードだよ!?
動き出した次の瞬間にトップスピードとか、物理法則を無視するにもほどがある。

叫んでる間にも高度は上がり、既に周りの山々よりも高い位置にいる。

「ぉぉぉぉぉぉ」

『どう、おにーちゃん?』

どうって、

「さいっこーだ、ファリィ!」

通りすぎていく風も、遥か下に見える大地も、彼方に見える景色も。
小さい時から想像していた通り、いや、想像以上だ。

『おにーちゃん、うれしそう』

「ああ、嬉しいさ! 夢が一つ叶った!」

『そっか。よかったね、おにーちゃん』

「ああ! サンキューな、ファリィ!」

『さんきゅー?』

「ありがとうってことだ!」

『そっか。どういたしまして。えへへ』

テレパシーで会話しながら、俺達は大空を駆け巡る。
その間、俺のテンションは上がりっぱなしで、センギのところへ戻るまで下がることはなかった。
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