蒼夜の混沌とした頭の中を徒然に書き綴るぺぇじ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 トントントン、と小気味良い音が響く。 それよりも若干小さな音が、トン、トン、トンと響く。 そして、二つの音に埋没するように、トン……、トン……、トン……。 途切れ途切れで、どこか危なっかしい音が響く。 トン……、トン……、ガツッ! 「うお!」 「おにーちゃん、だいじょうぶ?」 「お、おう。大丈夫だ。……ギリギリで」 左手の人差し指ギリギリに突き立つ包丁に冷や汗を流しながら、ファリィに答える。 「無理に手伝わなくても、休んでてもらっていいっスよ」 流れるように包丁を操りながら、センギが苦笑する。 淀みないその動きは、見ていて感心するほどだ。 料理することに慣れた人間の動き。 うちの弟と同じような動きだ。 「いや、そういうわけにもいかんだろ。泊めてもらってる身なんだし、手伝いくらいは」 「気持ちは嬉しいっスけど……」 「おにーちゃん、おりょうりへただねー」 「ぐっ」 言い淀むセンギの代わりに、ファリィが続きを口にする。 真実だけに、胸にぐさりと刺さる。 くう。こんなことなら、もう少し料理をできるようにしておくべきだったか。 家での食事は、ほとんど直人に任せてたからなー。 まさか、料理がこんなに難しいものだったとは。 いくら忙しかったからって、ほとんどやらせてしまって。 ごめんな、直人。 無事に帰れたら、兄ちゃんもうちょっと手伝うからな。 「料理の腕がどうこう以前に、直哉さん、今は全身疲労でろくに動けないじゃないっスか」 「うぐっ」 そうなのだ。 ファリィに乗って空を飛ぶことによって受けた疲労は、まだ全然回復していないのである。 それでも、食事を用意してもらって、自分は座っているだけっていうのは、些か申し訳ない。 だから、手伝いを進み出たんだが。 「逆に迷惑だったか……」 「いやいや、そんなことはないっスよ。でも、直哉さんはお客さんなんだから、ゆっくりしててほしいっス」 お客さんを働かせたら面目ないっスよ、とセンギ。 うう、気を使わせてしまった。 「おにーちゃんはすわってまってて。わたしがごちそうしてあげるから」 ふ、ファリィにまで……。 「うう、ごめん。それじゃ、おとなしく待ってるわ」 使っていた包丁とまな板を片付けて、台所を出る。 そのまま、ふらふらとリビングの椅子に座り込む。 「うだー」 本気で身体に力がはいらねー。 ファンタジーだとよくドラゴンに乗ったりする場面があるけど、ありゃウソだろ。 ちゃんと訓練した人間ならまだしも、子供が乗って平気とか、ありえねえ。 どういう訓練したら、平気になるんだ? 乗馬とかか? 「うーん」 椅子に身体を預けたまま、つらつらと考えていると、 「ん?」 「む?」 いきなり玄関の扉が開き、金髪の美人が入ってきた。 いきなりのことに、二人とも反応できずに硬直する。 沈黙。 台所から聞こえてくる、包丁の音だけが響く。 先に動いたのは、彼女の方だった。 「誰だ、キサマは!? 何故この家にいる!」 「うお!?」 ものすごい迫力で詰め寄られた。 その勢いのまま、襟首を掴まれて、 「ちょ、絞まる。絞まっでる!」 凄い力だ。 気道と血管を同時に絞められているせいで、あっという間に意識が薄くなっていく。 気のせいか、地についた足の感覚がない。 やべえ、死にはしないけど、失神コースだこれ。 タップして降参を伝えようにも、既に腕が動かない。 あ、駄目だ。 落ちる――。 「あれ、グレイズ。……何やってるっスか?」 意識を失う直前、不思議そうなセンギの声を聞いた気がした。 PR |
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